君と杯を交わそう　～契約婚から築く愛～
「少し時間はあるか」

と言って、久仁彦とお父さんは近くにある喫茶店へとやってきた。

「久仁彦くん」
「はい」
「珠洲には好きな人と結婚して欲しいと、ずっと思っていた。だから、紹介したい人がいると言われた時も反対するつもりはなかったんだが……」
「お父さんが心配するのは物凄く分かります。けど、僕は本気なんです」
「でもね……」
「……珠洲には、内緒にしてるんですが、今季で引退しようかと考えているんです。そうしたら、正社員で仕事をすることを考えているんです」

すらすらと出てくる言葉達。
引退はずっと考えていたこと。今じゃ、リレーで補欠のメンバーにしか参加出来ていない。潮時をずっと考えていた。ここで声にしとけば、必ず辞めることになると思い、口にした。


「……結婚は、認められない。申し訳ないけど」
「そうですか……」

お父さんの気持ちに変わりはなかった。

「けど、同棲は認めるから一緒に過ごしてやってくれないか？」

その一言で、真澄に対して、大切で愛しいという思いが伝わってくる。
< 38 / 48 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop