君と杯を交わそう　～契約婚から築く愛～
契約婚がスタートして、一ヶ月が過ぎた頃。杏莉は、緊張しながらある人の到着を待っていた。


「そんなに緊張することないよ。杏莉は普通にしてたらいいんだから」
「うん」


誠意を込めて作ったたくさんの料理達。それらを見渡して、ゆっくりと深呼吸する。

時計を見ると来客時間の数分前。予定時刻ちょうどに来客を知らせるインターホンが鳴った。

「今日は。初めまして、奥さん」


笑顔の人が立っていて、杏莉は静かにお辞儀をする。その後ろから女性と女の子が見える。

「今日は」

小学高学年か中学生くらいの女の子が元気よく挨拶をする。

「今日は。どうぞ、中にお入り下さい」

真司さんがそう言うと、教頭先生が家の中に入って行く。その後に続く、奥さんと娘の悠華は慣れているのか、苦笑いで杏莉に話しかける。

「ごめんなさいね。新婚さんの家にお邪魔して」
「お父さん、ずっと気にしてるんだ。バカでしょ？」


悠華の言葉になんて返したらいいのかわからない杏莉は笑ってごまかす。
一方、一足先に入っていった教頭先生は、隅々チェックしている。それを見て、真司もまた、苦笑いを浮かべる。
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