薄紅の花 ~交錯する思いは花弁となり散って逝く~





俺は昼休憩に人気のない学校裏に来ていた。


我らが学ぶ学び舎たる白い壁の校舎は背にある。凭れているのだ。目の前にあるのは若葉の生えた桜の木。もう桜は散ってしまったが、美しさを見せる。輝く葉が特に。葉色は緑色ばかりではない。太陽に反射すれば白を表すのだ。その中には黄緑色もある。



何故俺がここにいるのか。それは藤岡紫音に呼ばれたから。


本当は来るつもりなどなかった。だが何故か足が進んだのだ。不思議と。


これも彼女へ抱く何らかの感情故だろう。まぁ、ここまで来たのだから仕方のないことだ。それにしても静寂は良く俺一人で行かせてくれたものだ。人影に窺っていることも考えたが、近くで静寂の気配は感じない。静寂が自分の様子を窺わないなんて珍しい。何か企んでいるのだろうか。謎である。
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