薄紅の花 ~交錯する思いは花弁となり散って逝く~





「風邪をひくわよ、結斗様」



最近では毎晩のように結斗様はここに来る。案の定今日もいた。


暑さが残るとはいえ、薄着では風邪をひいてしまう。それなのに結斗様は薄い生地で作られた着物を着て、縁側にいる。色は結斗様の肌色と似通った、白。そのせいでか、結斗様の肌は闇の中で白く透き通るように光を放っているように見え、まるで死人のよう。きっと結斗様独特の白に近い肌色だから、というだけではなかろう。長時間夜風の中に体が晒されているからではなかろうか。それなのに結斗様は懲りもせず、上に何も羽織らぬままで出て行くのだ。


全く勘弁して欲しい。周りからの非難を受けるのは私だというのに。だから結斗様が外で桜を眺めている日は毎回何か羽織るものを持参し、結斗様に羽織らせる。それは今日も同じ。結斗様の細さが目立つ肩に闇に染められし墨染めの羽織を掛ける。
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