薄紅の花 ~交錯する思いは花弁となり散って逝く~


危なかった。兄が一瞬の隙を見せてくれねば、自分が負けていたかもしれない。そんな危機に見舞われながら回避した自分へ慰労の言葉を向けながら、腹部めがけて峰打ち一発で倒れた兄を見る。体は無理が生じていたために限界が来ており、心臓もまた同じ。微かに動いていることは分かるが、もう限界に近いのだろう。きっと1、2日遅ければ、既に死に至った兄の姿を見ることになっていたかもしれない。が、まだ兄は生きている。ならば兄を楽にするのは、俺の役目だ。


黒塗りの鞘に入っているものこそ薄紅華の葬。それを確認したうえで、紫音を真正面から見る。



「紫音、一緒に持って。そして陰の気を浄化し、共に兄を楽にさせてくれないかな」
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