シャクジの森で〜番外編〜
これが、どうやったらアレになるのかと、不思議に思う。

試しにそのうちの中のひとつに触れてみる。

ふんわりと柔らかな手触りで持っていても重さを全く感じない。

・・・成程、この素材であれば、確かにぴったりかもしれぬ・・・。



「アラン様はどの色が好きですか?」



―――私の好きな色か。

とりどりに用意された中から一つを指差す。

だが、これは――――



「・・・私はこの色が良い・・・だが、これはまだ取っておいてくれぬか。これ以外ならどの色でも構わぬゆえ」


そう申すと、エミリーは迷わずに一つの色を手に取った。



「ありがとうございます。これと、あのアラン様の色と迷っていたの。えっと、あと棒と本がいるわ。それと―――」


その後もあれこれと店主に出して貰い、エミリーは袋一杯の買い物を済ませた。


サリーも棚の向こうから、両手いっぱいに袋を抱えこちらにやってくる。

あのようにたくさんのものを全部何に使うのであろうか。

不思議な思いで見ていると、私の心を察したのか、サリーがこう申した。



「今使わなくても、いつか使うかもしれないだろ?だから気に入った物は今買っておくのさ。次来た時には、ないかもしれないからね。そしたら、悔しいだろ」



そういうものなのか。

まこと、女性の買い物はよく分からぬ。








「店主、閉店間際大儀であった」


「とんでも御座いません。光栄なことで御座います。王子妃様、またのお越しをお待ちしております」

「ありがとうございました。店主さん」


丁寧に頭を下げる店主に対し、これまた丁寧に挨拶を返すエミリー。


「エミリー、参るぞ」


手を引き、無理矢理外に連れ出す。

君は、放っておけばいつまでも頭の下げ合いをして居そうだ。
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