幼馴染と甘い夏【短編 】
押し倒されたままなので、翔ちゃんを見上げて様子を覗うと、
フッ、と小さく笑みがこぼれた後、
「なんで疑問形なんだよ。」
と、ぶっきらぼうな声が返ってきた。
でも、苛立ちは収まったみたい。
そのまま、何事もなかったように立ち上がると、あたしに手を差し伸べて、引き起こしてくれる。
「さ、暗くなる前に、帰ろうぜ。」
「うん。」
帰り道も、翔ちゃんはずっと手をつないでくれた。
それは、岩場を通り過ぎても続き、ペンションの前まで続いた。
ぼんやりと、昔こうして手をつないで遊んだな、なんて思い出してたのだけど、また考え事してたと怒られそうで、何も言えなかった。
翔ちゃんはお隣の、翔ちゃんのおじいちゃんのお家に滞在する。
「じゃ、また明日な。」
「うん。ありがとね。」
帰っていく翔ちゃんの後ろ姿は昔と全然違うのに、どこか懐かしくて、不思議な気持ちだった。