幼馴染と甘い夏【短編 】
そんなこと約束しなくたって、翔ちゃんは昔から誰にでも人当たりがよく、みんなに優しい。
だから、いくらだって女の子達は集まってくるに決まってるよ。
背も高くてスタイルもいい、顔もかっこいいと来たら、鬼に金棒だ。
商売のためとはいえ、女の子達をナンパし続けるようなポジションに翔ちゃんを置いた、我が従兄弟が、なんだか恨めしい。
「暑いよな~。アリサはもう中に入ってろよ。熱中症になるぞ?」
「あ、うん。」
ちょっとした気遣いが、嬉しい。
日陰にいても、外は恐ろしく暑くて、自分がパーカーを羽織っていることを思い出す。
あたしは、パーカーを抜いで畳むと、
「翔ちゃん、コレ、ありがとね。もうすぐ愛理が着替え持ってきてくれるから。
これは裏に置いといていいかな?」
「あ、ああ。別に今日貸すって言ったんだから、よかったのに。」
「ううん。ありがとう。」
何となく長居したことが恥ずかしくなって、早々に店内に戻ろうと思ったんだけど、
その時の翔ちゃんの表情は、少し寂しそうに、見えた気がした。