幼馴染と甘い夏【短編 】
翔ちゃんの表情は、逆光でよく見えない。
ドクドク音を立てる心臓。
「ご、ごめん!」
慌てて顔を下ろして、距離を取ろうと試みるも、そのまま後ろから抱きしめられて、動けなくなってしまった。
・・・どうしよう。
翔ちゃんの腕は、しっかりとあたしを捉えていて。
逃がさない、と言われているようで、胸が苦しくなる。
「なんで、今日に限って、俺に油断しないの?」
・・・え?
耳元、後ろから聞こえてくる翔ちゃんの声は、絞り出したようなかすれた声で、あたしの感覚を麻痺させる。
「翔ちゃん?何言って…「アリサにとって、俺はただの幼馴染?」
言葉を被せられて、次の言葉を飲み込む。
「アイツと、付き合うから…?」
「アイツ?」
「昼間の、あのメガネ。」