幼馴染と甘い夏【短編 】
月明かりの下、翔ちゃんの瞳が揺れる。
でも、その揺れる瞳からは翔ちゃんの気持ちを読み取ることはできなくて、あたしもただ見つめ返すだけ。
少なくともあたしは、久々の再会ですっかり、翔ちゃんが好きになっちゃったよ?
ケンタさんなんかより、全然運命的だよ?
「っだって、翔ちゃ…」
沈黙に耐えきれなくなったのは、あたし。
(彼女がいるんでしょ?)
その言葉は、言わせてもらえなかった。
口を開いたとたん、引き寄せられて、すっぽり翔ちゃんの腕の中。
「…関係ないなんて言うなよ。」
厚い胸板に頬があたり、トクントクンと、心臓の音が聞こえる。
その温かさに安心して、じわりと涙がにじむ。
それって、どういう意味…?
どう返事をしたらいいのか、分からない。
ここで変なことを言って、夏休み中のバイトに影響させたくない。
ぎゅっと目をつむったけれど、翔ちゃんに顔を両手で掴まれてしまった。
再び視線が交わるあたし達。