幼馴染と甘い夏【短編 】
どんどん歩いて、ペンションを通り過ぎ、連れてこられたのは、翔ちゃんの家。
高校まではおじいちゃんおばあちゃんと家族同居で、当時離れを増築して、翔ちゃんの部屋にしたことは、聞いていた。
寝静まった母屋の脇から、翔ちゃんの部屋のカギを開け、中に入る。
普段の生活は都内だから、ここは生活感のない、家具と思い出の品が並んだ不思議な空間だ。
中を見回すのも束の間、部屋に上がるなり体がひょいっと持ち上がる。
「わわッ」
予想しない出来事と、高さに身を固くしたけれど、翔ちゃんの腕は逞しくあたしを抱きかかえていて、あたしがバタついてもビクともしない。
「暴れるなって」
そう言ってベッドの上に優しく下ろされる。
翔ちゃんを見上げれば、そのままあたしに覆いかぶさるようにベッドへ登ってきて。
端正な甘いマスクに、獲物を狩る野生動物のような目というギャップに、心臓はフル回転。
あたしを求めてくれるのは、酔った勢い・・・?
「今日、泊まってけよ。いいよな…?」
翔ちゃんは返事をできずにいるあたしを、そのままシーツの海へ沈み込ませた。