幼馴染と甘い夏【短編 】
昨日は確かに、翔ちゃんの気持ちを感じた筈なのに。
急に何も見えなくなってしまったあたし。
涙がこぼれないように、ただ、黙って衣服を身に着ける。
そのまま部屋から出ようとするあたしを、翔ちゃんが慌てて引き留める。
「アリサ?どうしたんだよ、急に。」
なんで自分の犯した過ちに気が付かないのよ!
文句を言いたくても、何か言葉を口にしたら、涙が止まらなくなりそうだ。
一刻も早く、この場から立ち去りたかった。
あたしを引き留めようと、掴まれる手首。
昨日は繋がれたことがあんなにも嬉しかったのに、今はここにいる自分がみじめに思えて仕方ない。
「・・・で。」
「は?」
「もう、あたしに触らないで!」
「ちょっ、何言って…」
思い切り手を振りほどいて、ミュールを引っかけて部屋から飛び出すあたしを、下着姿の翔ちゃんが追えるはずもなく。
あたしは全速力で、ペンションの愛理との部屋に飛び込んだ。