幼馴染と甘い夏【短編 】
小学生の低学年の時まで、あたしの家族もこの辺に暮らしてたんだ。
翔ちゃんは、タメでいわゆる幼なじみ。
でも、引っ越してから会うことはなかったし。
当時から可愛い男の子ではあったけど、こんなイケメンに育っているとは。
「なんで、俺の顔忘れてんだよ。」
不機嫌というか、顔の割に口が悪いというか。
「翔ちゃんちは大学入って引っ越したって聞いてたからいると思わないし。
それに、何年も会ってないし、全然昔の面影ないし。分かんないよ。」
ぶー、と口を尖らせる。
なんか、悔しい。
「俺も今年は哲平さんのとこでバイトしに来たんだよ。」
そう言って、愛理にヨロシクと挨拶を交わす。
その笑顔は、可愛い笑顔なのに・・・。
「ってか、アリサは昔から方向音痴だし、そうやって口を尖らせるし、ホント変わんないな。」
そういって、後ろを振り返って見せた意地悪な笑みは、昔見せた可愛いくせに小憎らしい翔ちゃんの面影を残しているような、そんな気がした。