「 好 き 」【短編】
「だから、今まで言えなかったんだ……。ゴメン……ゴメンな?」
抱きしめていたけど、スッと体を離した。
あたしはなんだかもっと強く抱きしめてほしかった。
輝が体を離した時、何か分かんないけど、寂しさが込み上げてきた。
でもその気持ちは一瞬で幸せに変わる。
また抱き寄せたかと思うと耳元で、確かにあたしにこう言ったんだ。
「好きだ」
………って。
あたしは目から温かい何かがボロボロと零れ落ちてきた。
「…麻美は?」
顔をこっちに向けさせ、優しい目があたしに向けられている。
あぁ、あたしはこれを望んでいたんだ。
「…っそんなの、決まってるじゃん……ッ!」
泣きながら言うあたし。
優しい目を向けながら、あたしの目から零れ落ちるものを手で拭ってくれる………
あたしの好きな人。
「…誰?」
「…ぃじわる」
「言わないと分かんないんだって…ほら、言えよ」
悪戯っぽく笑う。