「 好 き 」【短編】
両 想 い 。
* 清水 麻美 *
「…はぁ、胸が痛い…」
昨日の駄菓子屋のあの時からあたしの胸はズキズキと痛んでいた。
あまり眠れなかったし…。
はぁ…今日謝るはずだったのに…。
素直になれないあたし。
「可愛くないなぁ……」
今バスを乗ったところ。
いつもなら翔の自転車に2人乗りして帰るのに喧嘩してもう一緒になんて帰れない。
「…もう本当に可愛くないなあ…」
ボソッと呟いたはずだった。
だけど……
「可愛いよ」
「えっ?」
今のあたしに言ったの?
そう思いながら、声をした方に振り向くと…
「どうしたの、なんか悩み事?」
あたしの座っている隣にその方はいた。
「えっ…と」
あれ? あたし誰も座っていない場所に座った気がするんだけど…。
しかも回りを見ると、結構スカスカに場所余っているのに、何故かあたしの隣に座っている…イケメンっ!?
「ほわっ!?」
後退りしたいところだけど、今一番端っこに座っていて、隣には鉄の手すりしかないわけであって当然後退りなんて出来ない。
「オレに話してみない?」
どんどん距離は近くなる。
「…え、いや…あの…」
困ったなあ…。
でもイケメンだな、この人。
「…何、言えない?」
「えっ? あぁ、いや! あの…別にどうということないので…」