プラチナ・ラブ

……だが、相手は俺を生む気すらなかった女に息子を預けた父親だ。

……ロクでもないことは目に見えてる。


「……いらねぇよ、そんなの」

「あら、残念。
せっかくお父様と会えるのに」


……別に、今まで十年間親父と会わないでやってきたんだ。


今更……会う必要なんてない。


「でも、この住所はここに置いていくわ。
その気になったらいつでも行ってきなさい」


そう言いながら、学園長は立ち上がった。


「アンタ……どういうつもりだよ」

「どういうつもりも何も、私の生徒に最大限手を尽くしてあげるのが教育者としてあるべき立場でしょ?
あなたは私の学校の生徒なんだから。
……行くわよ、矢田」


……学園長と秘書は家を出て行った。


俺は……住所が書かれた紙を見ながら立ち尽くしていた。


親父がいるかもしれない場所が書かれた紙を見ながら……ずっと。

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