プラチナ・ラブ
「あの……どちら様ですか?」
「あ……すみません。
俺は浅海大翔といって……」
「浅海……大翔……?」
女性は少し考える素振りを見せたあと、すぐに大きく目を見開いた。
「もしかして……主人の……」
「……はい。
……息子です」
知ってるんだ……この奥さん。
俺のこと、ちゃんと話してるのか……?
「ちょ、ちょっと待っててくださいね!
今すぐ主人を……!」
そう言ってドタドタと音を立てながら女性は家の中へと入っていった。
……なぜか今更になって緊張してきた。
もうすぐ……もうすぐ親父に会える。
十年間……一度も会うことのなかった親父に……。
「……大翔……?」
懐かしい声が聞こえてきて……俺はゆっくりと顔を上げた。
「親父………」
……十年前より少し老けた親父が……そこにいた。
「大翔!!」
親父は靴も履かないまま玄関から出てきて、俺を力強く抱きしめた。
十年振りの……親父の匂いだった。