プラチナ・ラブ

「君があの母親からどういう扱いを受けてるのか知ってる。
浅海大翔君、君のこともね」


瀬和さんは俺の方を見てそう言った。

……この人は……一体……。


「俺は君を救いたい。
だから……養子縁組を組まないか?」


養子縁組……?

この人と花音が……?


花音を見ると……花音は瀬和さんの名刺に視線を落としたまま何も言わなかった。


「あのまま……小百合の元にいたら、君は本来の自分でいられなくなる」


花音は顔を上げると、冷めた目で瀬和さんを見た。


「……残念ですが、あたしはあなたを信用できません」

「花音ちゃん……」

「元はあの人の婚約者なんでしょ?
……そんな人を信用するなんて、あたしには無理です」


花音……。


「大体、あたしを養女にしてあなたには何のメリットがあるんですか?
……理解できません」

「俺はただ君を救いたいだけだ。
メリット、デメリットの問題じゃない」

「それでも……あたしは大人を信用できません。
……特にあなたみたいな大金持ちは」


花音はそう言って体の向きを変えて店から出ていこうとした。

その時……


「俺は君の父親のお墓の場所を知っている」

「え……?」


店を出ていこうとした花音の足が止まった。

……恐る恐る振り返って瀬和さんの方を見る。


「……行きたくないか?
父親のお墓参りに」

「っ……結構です」


……花音は唇をキュッと噛み締めながら店を出ていった。

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