プラチナ・ラブ
「……何を言ってるの?」
「何って……」
あたしは、ただ……
「行くわけないでしょ。
何でアンタの進路のために私が貴重な仕事の時間を割かなきゃいけないの?」
「っ………!!」
「私はね、無駄が大嫌いなの。
そんな無駄なことをしてる間に一体いくら稼げることか」
……お金。
この人は……あたしよりお金が大事……。
「大体、アンタの進路は決まってるでしょ。
高校を卒業したら結婚するのよ。
その後はアンタがどうなろうと私には関係ないわ。
興味すらないもの」
「そんな………」
「せいぜい、私の顔に泥を塗らないように今から花嫁修業でもしておくことね。
また婚約破棄でもされたら堪ったもんじゃないわ」
「っ…………」
……分かっていた。
分かっていたはずなのに……。
あたしはどうして少なからず期待を胸に抱いてしまったんだろう……。
……あたしは堪え切れなくて、部屋を飛び出した。
あの人の部屋を出て……玄関に向かって走る。
やっぱり……ダメだった。
もう無理だ……。
「花音様?」
名前を呼ばれて振り返ると、矢田さんが心配そうにあたしの方を見ていた。
「どちらに……?」
「……大翔のとこ」
あたしは矢田さんの前では必死で涙を堪えていた。
でも、あたしの顔を見れば矢田さんには何があったかなんて丸分かりだろう。
「……お送りします。
もう暗いので、お一人では心配ですから」
矢田さんは小さく口元を緩めながらそう言った。