プラチナ・ラブ

「はー……緊張した……」


俺の三者面談を終え、次の花音の面談も終えたタカさんはグッと大きく伸びた。


「三者面談ってこんなんだったっけ?
もっと気楽なもんだと思ってたのにな……」


やっぱり生徒側と保護者側では気持ちが全然違うらしい。

当たり前だけど。


タカさんと花音と並んで静かな廊下を歩く俺。


「よし!
今日は俺達頑張ったからすき焼きにしよう!!」

「頑張ってたのはタカさんだけだと思うけど……」

「細かいことは気にするな。
花音ちゃんも食べてくだろ?」

「え……いいんですか?」

「当たり前。
俺にとっては大翔も花音ちゃんも家族同然だからな」


タカさん……。


「あ……じゃあ、あたしが作ります!」

「え?花音ちゃんが?」

「はい!
今日はお世話になったし……お礼させてください」


花音の言葉を聞いてタカさんは嬉しそうに目を輝かせた。


「娘の手料理……憧れだったんだ……」

「まだ娘じゃないけどな……」

「いいんだよ。
大翔だってこんなおじさんが作ったのより花音ちゃんの手料理食べたいだろ?」

「当たり前だろ」

「ちょっ、即答!?
確かに若い女の子が作った料理の方が嬉しいけどさ~……」


冗談だよ。

タカさんには本当に感謝してるんだから。

感謝してもしきれないぐらい。


俺達は何も考えずにただ能天気に話しながら廊下を歩いていた。

だから、気づかなかったんだ。

俺達に迫り寄る……魔女のような女に。

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