プラチナ・ラブ
頭を上げ、あたしは背を向けて扉の方に向かって歩き出した。
……その時だった。
「……花音」
名前を呼ばれ、驚いたあたしは勢いよく振り返った。
いつも、アンタとか……名前じゃ呼ばれないのに……。
あの人……お母さんは机の上に一枚の紙を置いた。
あたしが近寄って見てみると、そこには住所らしきものが書いてあった。
「浅海大翔の母親の住所よ」
「え……?」
「もし彼が母親に会いたいと言った時には……渡してあげなさい」
ぶっきらぼうな言い方だけど……あたしには分かった。
これは、今お母さんができる最大限の優しさなんだって。
大翔にお父さんの住所を渡した時のような……意地の悪いことは考えてないって。
「……ありがとう」
あたしは静かに微笑むと、その紙を受け取って学園長室を出た。