プラチナ・ラブ
「……私にとって父親は一人しかいません。
会ったことはないけど……でも、あたしの誕生をずっと心待ちにしてくれていた……大事な人です」
「……あぁ」
「あたしはそんな父を愛した母がこっちを振り向いてくれるまで……待ちたいと思います」
瀬和さんが静かにじっとあたしの目を見つめた。
「でも……きっとあたしがあそこにいたら、母は一歩踏み出せないと思うから。
あたしも……あの家にいたら、きっと……何も変われないと思うから」
あたしもまっすぐ瀬和さんの目を見る……。
「瀬和さんが……母に向かってあたし達のことを愛してるって言ってくれた時……本当に嬉しかった。
あたしの父親は一人だけです。
でも……瀬和さんなら、きっと父も分かってくれると思います」
「花音ちゃん……」
「……あたしが娘でも……いいですか?」
……瀬和さんは笑顔で大きく……ゆっくりと頷いた。
「……もちろん」
ねぇ……お父さん。
あたし、今……新しい道を歩こうとしてるよ。
合ってるか間違ってるかなんて分からないけど……
でも……今のあたしは幸せだよ。
……お父さん。
あたしを生んでほしいと言ってくれてありがとう。
生まれるのを楽しみにしてくれてありがとう。
素敵な名前を……ありがとう。