プラチナ・ラブ

「……今はいいや」

「え?」

「今会っても、多分何も変わらないと思う。
でも……いつか俺がちゃんと自立して、一人前の大人になった時には……ちゃんと話をしに行こうと思う」

「大翔……」


まだガキの俺はきっとあの女の顔を見ただけで制御が利かなくなると思う。

怒りと憎しみだけが込み上げてくるだろう。


何年後になるかは分からない。


でも、俺が自立して……家庭を持って、あの女と同じ立場になった時……その時には今の俺には分からないまた違った何かが見えてくると思うから。


その時まで……俺は頑張ろう。


そして、その時には……もう一度親父にも会って、ちゃんと親父の話を最後まで聞こうと思う。


10年前……何があったのか。


たとえ、それが俺にとって辛い真実だとしても……全部受け止めよう。


「だから……その時まで花音が持ってて。
……俺が話をしたいと思えるようになるまで」

「……うん、分かった」

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