ハツ∞コイ~中学編~
[side 多軌柊斗]
天気予報がはずれた雨の日。
喜瀬さんに皆傘を借りるのが恒例行事になっている気がした。
俺はイベント委員の集まりがある為、特教に行った。
「遅い!」
先生の声と共に特教に入って来たのは喜瀬さんだった。
先生も事情が分かっていてしつこく問いつめなかった。
「まず5月のオリエンテーションについてなのですが…」
…(汗)
喜瀬さん。
それじゃ聞こえないと…
喜瀬さんが困まった顔したから俺…
「俺から提案!自由行動入れたら?」
助けちゃったし。
不思議そうな顔をして俺の事を見る喜瀬さんが何故か面白かった。
委員会が終わった後、喜瀬さんは俺の目の前にぴょこんと現れた。
何だよ、その現れ方。
「あのっ、ありがとうございましたっ!」
お礼を言いに来てくれた喜瀬さんに、ちょっと意地悪をしたくなった。
「喜瀬さん、もう少し頑張ってくれれば────なんてね」
俺はニット笑い特教を出た。
「…1本も残ってなかったんだ…」
もしかして全部かしたのか?
「喜瀬さんって親切だよな」
俺はボソッと呟いた。
俺は喜瀬さんに傘を貸しに走った。
何で俺走ってんだ?
「喜瀬さん!傘ないんだろ?」
喜瀬さん、顔に出てる。
ばれたって。
「俺2つ持ってるんだ。貸す」
俺は喜瀬さんに傘を渡した。
「ありがとね!」
喜瀬さんの笑顔が嬉しくて、貸して良かったと思わせてくれる。
「これで俺、風邪引いたら恥ずかしいな」