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そんな心に大きな穴が開いたまま、バイトをしていた。



バイトも終わり、帰ろうと裏口から出ると大通りを歩く春奈の姿が目に入った。


『春奈!?』



俺は春奈を追いかけた。


「春奈!」


「貴ちゃん・・・・」


春奈が振り返ると、春奈の顔はなんだかとても悲しそうに見えた。


「春奈!今日はごめん!すっぽかして!」


俺は頭を深く下げた。


「う、うん・・・・あたしの方こそごめんね・・・」



春奈が謝ってきたので顔を上げると、春奈の目に一粒の涙が光るのが見えた。


「春奈・・・?」



俺は心配になり、春奈に近寄ろうとした。



「ご、ごめん!あたし、今日は帰るね!」



そう言って、春奈は走り去ってしまった。



「春奈!」



俺が叫んでも、春奈は振り向きもしないで行ってしまった。



俺にはなぜ春奈が泣いていたのか全く分からなかった。


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