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「親類もいなく、春奈は一人ぼっちでした。
幼い頃は児童施設で育ったって聞いています。そんな春奈を私は道で偶然見かけたんです。とても寂しそうな顔をしていました。だけど、あの子には何か引き寄せられるものがありました。だから、私はスカウトしたんです。」




「そんな・・・」




春奈は小さい頃から頼る人が誰もいなかったということだ。




だから、春奈は誰にも頼ろうとしないのだと分かった。




「この仕事をする前は、誕生日など大嫌いだと言っていました。母親の命日と自分の誕生日が一緒だからって・・・」





俺は春奈の生きてきた人生があまりにも、辛そうで言葉が出なかった。
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