voice-ヴォイス-
ここに海以外の女性はいないはず。
だが、海にはその声に聞き覚えがある。
それは5年前に失った自分の声だった。
「海、、、今喋った!」
尊と洵が驚いて喜んだ。
でも一番驚いたのは海自分自身だった。
「あたし、、、喋れてる。声、出てる!!!」
5年前の声と一緒の高さで響き。
やっと解放されたんだ、、、
そう心から思った。このバンドに入ったから、あたしは――――。
洵が不器用に笑った。
「海、よかったな。解放されたんだ。閉じ込めてた自分の想いから。」
海は頷きながら泣いた。
何度も何度も頷きながら泣いた。
「その友達に伝えてやれよ。」
机に置いてあった海のケータイを取り、海にしっかり持たせた。
海は涙をグイッと拭い、雫に電話を掛けた。
この番号にかけるのは5年前以来だ。
喋れなかったため、LINEばっかりだったからコール音が染み渡るように聞こえる。
雫、驚くかな。