voice-ヴォイス-
その後、そのレコード会社と契約を交わし、その会社でのデビューが決定した。
その日の夜はいつもの尊の家でパーティーとなった。
みんなで海の作ったご馳走を食べながらこれからのことを話した。
「いま、動画サイトで人気が一応あっても、これからどうなるかわからない。俺がこの前に話したバンドマンの知り合いもデビューしてから前からいたファンがファンをやめたらしい。」
洵が言う。
「やっぱり価値観ってのかな。そこに行ったら会える、っていうのが今の俺たちの実情じゃん。でも人気とか出たらそういうわけにもいかなくなったりして、ファンにとって俺たちの存在が遠く感じてしまう。」
「確かにあるよなー、そういうの。俺も中学の頃、好きだったバンドがデビューして嬉しかったのに、存在が遠く感じてきて、次第に気持ち前よりも薄れてたもんな」
海はみんなの会話に『そうなんだ、、』と思いながら料理を口に運んでいた。
海にはとくに溺愛するバンドやアーティストがいるわけだはなかった。
雫に言われるまでフォークロの存在さえ知らなかったくらいだ。
ただ、音楽をしていることが楽しかった。
これで食べていけたらなとか、これが職業にできたらな、なんて夢見ていただけだった。