voice-ヴォイス-
そして開演時間がきた。
「よし、行こうか」
尊の声でみんなが立ち上がった。
「やっぱり緊張はみんなしてると思う。だけどこのライブはファンへの感謝の気持ちだ。だから自分たちが楽しまなきゃファンへ失礼だと俺は思ってる。楽しんでいこうな」
尊がみんなに語り掛け、みんな頷く。
そしてみんな気合を入れて控室からステージ下に移動した。
もうあと数歩ほど歩けばステージというところにスタンバイする。
そこには思った以上に客の歓声が聞こえる。
やっぱり緊張する。
ほぐれたと思っていた緊張感は再来した。
だが本番はもうすぐ。
楽しんでいかなきゃ。緊張なんてしてられないんだ。
会場に流れていたBGMの音が大きくなった。
それが開演のしるし。
客の歓声もヒートアップする。
海の好きなアーティストも始めから終わりまで楽しんでいたし、全力だった。
自分もそうなりたい、そう思ってステージに上がり、自分の位置にスタンバイした。