voice-ヴォイス-
マイクが地面に落ち、キーンという耳を塞ぎたくなるような音が会場に響き渡った。
一体、何が起きているのか。
そんなこと誰にも分からない。
こんなのシナリオにない。
洵と遼、優、スタッフが尊に駆け寄る。
ファンが悲鳴を上げた。
海はその場に立ちすくんだ。
『本日のライブは終了いたしました。みなさま、お気をつけてお帰り下さい』と場内アナウンスが流れ、急遽幕が閉められたら。
幕越しに同様するファンの悲鳴やらが聞こえる。
どうして、こんな、どうして、、、、
目の前にはぐったりと倒れ込んだ尊。
まるで声と親を失ったあの日みたいな感覚が襲った。
そして尊にゆっくり近寄る。
尊は苦しそうに顔を歪め、誰の声にも返事を返さない。
これって──。
病気なのではないか、なんて考えてしまって海はその場でただただ尊に泣きながら声をかけることしかできなかった。