voice-ヴォイス-
その日、3曲分の譜面をもらった。
早速、帰宅してから軽くは練習しよう、
叔母の作った晩飯を海と叔父と叔母で食卓を囲む。
「海ちゃん、今日は帰りがいつもより遅かったわね。何かしていたの?」
と叔母が優しげに問いかける。
この家にいる間、百均に置いてあるような持ち歩き可能な軽いホワイトボードを会話に用いている。
【そのことでお願いがあるんですが聞いてもらっていいですか?】
と書いて叔父と叔母に向けて掲げる。
「海ちゃんからお願いってのは初めてだな。なんだい?」
とグラスに入ったビールを一口飲んで笑って頷いた。
【私、バンドにスカウトされて、まだはっきりは入れるか決まってないんですが、音楽をその人たちとやりたいんです】
叔父と叔母は驚いた表情をした。
海がギターを大切に扱っているのを叔父たちは知っていた。
だが、そこまで本格的な夢を持っているだなんて知らなかった、そう言いたげな様子だ。