voice-ヴォイス-




「海、嬉しくないの?」


尊にそう聞かれた意味がわからなかった。


海は首を横に振ってから首を傾げた。



「だって海、泣いてるから」


海は気付かなかった。目元を指先で触ると濡れていた。



「マジ、尊って鈍感だよなー。合格が嬉しくなかっらあんなに楽しそうに演奏しないだろ、普通。うれし泣きってやつだよ」


「涙=嬉しくない。って発想がバカの象徴だよなー」


優と凌が尊をバカにする。


「うっせーよ!お前らだけには言われたくないね!」



どうやら尊はいじられキャラのようだ。



海はそのやり取りがおかしくて笑った。


こんなの久しぶりだ。



声が出た頃は雫以外の子とも仲良かったし、いっぱいバカもやって、いっぱいお喋りもした。



その頃のやり取りを見ている気分。



尊が海を見て笑った。


「海ってそういう笑い方で笑うんだな!ずっと生真面目そうな軽い笑いしか見せなかったから笑ってくれて嬉しい」



そんなこといきなり言われても。



海は照れた。




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