voice-ヴォイス-
海(ウミ)がメンバーになってから3か月ほどが経った。
それなりにバンドに溶け込んできたし、学校との両立も慣れてきた。
動画で見たと学校で声をかけてくれる人はいたが、喋れないというハンディーがあり、会話が面倒だと思われてか、友達とまでは進展はなかった。
そんなある日のことだった。
放課後、スタジオに行くと、そこには洵(マコト)しかいなかった。
「よっ。」
洵はギターの練習にいそしんでいた。
洵以外の誰もいなかった。
これまでにこんなことはなかった。
「他のやつらはみんなバイトで遅れるそうだ。」
そうなんだ、、
洵と2人きりなんて初めてだ、なんて思いながら通学鞄を部屋の隅っこに置いた。
一応、慣れてはきたが、優(スグル)や凌(リョウ)、尊(タケル)みたいに洵には気軽に話せない。
表情を読めないし、彼側も冷静な方で自分からペラペラ喋るような人じゃない。
洵は黙ってギターを静かに弾いている。
海も黙ってギターをケースから取り出し、準備を始める。