オトナの秘密基地
たとえほんの数人助けたつもりでも、未来が大幅に変わる可能性は高い。


「ごめんなさい、これ以上は言えません」


本当は、伝えたい。

できないことが、もどかしい。

歯切れの悪い言葉しか使えない自分が嫌だ。

うつむいて、そのままじっと沈黙に耐える。


「俺は知らない方がいいんだな?」


静かに、旦那様が答えを確かめてくれる。

力なく、頷くしかなかった。


「それで『和実』と子ども達が危機を乗り越えることはできるのか?」


その問いにだったら答えられる。


「向こうの世界で調べて来ました。

安全な場所を確認したので、それも大丈夫です」


「そうか。

和子の身と子ども達がちゃんと生きていけるなら、安心だ」


心からほっとしたような表情で、旦那様は静かに笑った。

静かに笑いながら……ぽつりと呟いた。


「俺がいなくても、和子と子ども達がしっかり生きていけるだろうか。

それだけが、心残りだった」
< 123 / 294 >

この作品をシェア

pagetop