オトナの秘密基地
やっぱり。

旦那様はもう、戻って来られないだろうと覚悟を決めていた。

自分の事より、妻子の安全を切に願うその姿を、和子さんはいつも見ていたんだろうな。


「中田家は、大丈夫です。

だから安心して下さい。

安心して……」


安心して、行ってらっしゃいなんて言いたくなかった。

そう言わなくちゃいけない当時の風潮なんて私には理解しがたい。

言いよどむ私を見て、旦那様があとの言葉を繋げてくれた。


「家族が安心して暮らせる国にするために、行ってくる。

ただ、ひとつだけ教えて欲しい。

俺達はこれから千島へ行き、本土を守るために行動する。

これは、国のためになるのか?」
< 124 / 294 >

この作品をシェア

pagetop