オトナの秘密基地
「国のため、ですか?」


「そう。ガダルカナル、サイパンとどんどん日本軍は負け戦が続いている。

転進、なんて発表しているが、そうじゃない事くらい、解りきっているんだ。

このままでは、千島も危ない」


日本史で習った通りだ。

国民にはなるべく「負け戦」を知らせず、とにかく勝った話だけを喧伝して戦意高揚に努めたと。

でも、軍人である旦那様は当然、正しい情報も把握している訳で。

私は、余計な事を言わずに頷くだけだった。


「だから俺達、北鎮部隊が行く訳だが、それは正しい行動だったのか?

北海道に残って、ここを守るべきではないのか?」


やはり中田さんから聞いたとおりだった。

旦那様はこれから千島へ行き、そこで戦死する運命となっているらしい。
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