オトナの秘密基地
「そうか。俺達が行くことで、北海道が守られるのだな。

そこへ行くことは無駄ではないと……後の世でそう語り継いでもらえるならば、本望だ」


旦那様はそう言って、また、カツヤの頭を撫でた。

その様子を見るにつけ、やっぱり「行かないで」と言いたくなる。


旦那様には言えない。

おじいちゃんから聞いた、北鎮部隊の最期。

ソ連が日ソ不可侵条約を破棄して、終戦の6日前に参戦してきたこと。

ポツダム宣言を受諾して無条件降伏した後、突然千島に攻め込んできたこと。

激しい戦闘で、多数の死者が出たけれど、遺体を引き取ることもできずに内地へ引き上げたこと。

戦闘には勝利したのに、無条件降伏ということから、その島を放棄せざるを得なかったこと。
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