オトナの秘密基地
坊主頭だけど、眼鏡なしの紋付き袴姿の旦那様も、ものすごく男前だ。


「これは、何年前ですか?」


「3年ちょっと前だ。

ああ、こっちに全員揃った写真がある」


旦那様に手渡されて、親族みんなで撮影している写真を見せてもらう。


「これが叔父夫婦。防空壕の中で怒鳴っていたのはこの叔父といとこの正(ただし)」


それから、写真の中の人たちの説明を一通り聞いて、和子さんがどう呼んでいたのかも教わった。

同居している訳ではないから、これで何とかごまかせる、かな?

配給の切符のもらい方、使い方も教わった。


「そうそう、カツヤの時から使っていたものだが、これも配給を受けるために必要だと聞いた」


手渡されたのは、薄い紙を折りたたんだもの。

表には『妊婦手帳』と印刷されている。

今の母子手帳の原型になったもので、これがあれば出産に必要な綿やミルクなどの配給がもらえるとあって、一気に普及したそうな。

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