オトナの秘密基地
井戸の使い方も聞いて、実際に水を出してみた。

かまどで火を起こす方法も、旦那様がやっているのを見て覚えた。

マッチだってこの時代は配給品だから、無駄にできない。

いざという時、物々交換に使える、豪華な着物の収納場所も教えてもらった。

そして気になる出産は、すぐ隣の集落の産婆さんを頼んで自宅で産むのが普通だそう。

恐ろしいので、できればそれまでに元の世界へ戻りたいと思った。

きっと、相当苦労するに違いない。


最後に聞いておこう。


「和子さんは、あなたのことを何と呼んでいたのですか?」


「結婚前は、若旦那、だった。

結婚してからやっと名前で呼んでくれたよ。

征二(せいじ)というのが、俺の名前だ」


照れながら、教えてくれた。
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