オトナの秘密基地
人数だけは揃っても、兵隊一人ひとりの能力が落ちていく中、職業軍人の苦労も恐らく相当のものだったはず。

そして、銃後を守る女性と、我が子を次々と戦場へ送り出さなければならなかったお年寄りの心情も、今なら痛いほど解る。


【出征軍人の家】の木札を見つめながら、和子さんも辛抱を重ねたに違いなかった。


「か~しゃん、だっこ!」


外でぼんやりしていたら、カツヤに抱っこをせがまれた。


「カツヤ、ちょっと待っててね。

お家の中に入って、座って抱っこしてあげるからね」


今、無理をして早産、なんてことになったら大変だ。

カツヤの小さな手を握って、家の中へ。

この広い家に、今は私とカツヤしかいない。

この子は私が守るしかないと思ったら、責任の重さに押しつぶされそうだった。
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