オトナの秘密基地
家の中でカツヤを抱っこして、お話を聞かせる。


「むか~しむかし、あるところにおじいさんとおばあさんが暮らしていました……」


よく、甥のミヅキもこうやって私の話を聞いていたっけ。

妹と子ども達には振り回されたけれど、あの時ミヅキとルナを世話した経験がなかったらどうなっていたことか。

人生に無駄な事なんてないってよく言うけれど、本当かも知れない。

愛実にイラつき、それでも可愛い子ども達と遊んだあの1か月が、遠い昔のことのように思えた。

今の時代から考えると、はるか未来の話だというのに。

カツヤに昔話を聞かせて、少し休憩していたら、玄関がガラリと開いた。

ごめんください、と声を掛けることなく侵入してきたのは……。
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