オトナの秘密基地
そう答えたものの、正さんの帰る様子は全くない。

ならばこちらから外へ出ようか、と思った。


「すみません、これから出かけようと思っていたんです」


「どこへ?」


そう聞かれて、一瞬考えた。

畑や田んぼだと、付いて来られる可能性がある。

少し遠くで、正さんが行かないであろう場所は……そうだ。


「神社へ行ってきます。

征二さんの無事を祈って、これから日課にしようと思っていたんです」


そう伝えると、正さんはますますニヤニヤ笑いながら、こちらに近づいてきた。

私はカツヤを抱っこしたまま、じりじりと後退する。

そんな様子を見ながら、正さんは言った。


「祈って待っても征二が戻らなかったら?」
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