オトナの秘密基地
大学時代、民法のレポートには泣かされたけれど、あの時旧民法と今の民法との違いを必死でまとめておいて良かった。

ホント、人生に無駄はなかったと実感。

大学図書館で仲間と必死にレポートの資料をやり取りして、コピー機を使いまくってたらトナーがなくなって2台とも使用禁止にしてしまったことがあったっけ。

あの時の苦労を思い出して、ちょっとだけ笑った。


正さんはそれを見逃さなかった。


「ふうん。和子はずいぶん余裕があるな。

小学校しか出ていないお前が、この家を守っていけると本気で思っているのか?」


うすら笑いを浮かべた正さんが、またじりじりと近づいてきた。

完璧に、見下されている。

男尊女卑のこの時代、しかも和子さんには家柄も学歴もないから、当たり前だったのかも知れないけれど。
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