オトナの秘密基地
まずい、相手を興奮させてしまった。

こんなバカ男、いくらでも論破してやれるけれど、ここには私とカツヤしかいない。

危害を加えられても、誰も助けてくれない。

私とカツヤとお腹の子を守るために、どうすればいいのか必死で考える。


……話題を変えよう。


「だって、正さんにももしかしたら赤紙が来るかも知れないですよね。

これ以上、戦場へ夫を送り出す役目を、私は果たせません……」


我ながら相手を傷つけない言葉を選んだと思ったのに、正さんはそれを鼻で笑った。

何故?


「俺は兵隊にならない。

結核を患っていることになっているらしい。

ま、俺の知らない所で親父が勝手に手を回したんだろうよ。

いくら金積んだんだろうな、ははっ」


……絶句。
< 149 / 294 >

この作品をシェア

pagetop