オトナの秘密基地
今、出征したばかりの夫を待つ私に、よくそんな話ができたものだわと、呆れ果てた。

私が冷ややかな目で見ていることに気付かない正さんは、また嫌らしい笑いを浮かべて迫ってきた。

いとことは言っても、征二さんと正さんは、似ても似つかない風貌だった。

私のストライクゾーンから、大きく外れている。

その顔が近づいてきて、寒気がした。


「どうだ、悪い話じゃないと思うが」


「私は征二さんが戻ってくると信じていますから」


「戻ってこなかったら?」


「征二さんを弔いながら子育てします」


「ひとりで育てるのが大変だから、手伝ってやるって言ってんだよ!

……カツヤ、何だその眼は。

小作農の娘から生まれたガキに、中田家の金を横取りされてたまるか!」

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