オトナの秘密基地
この時代の兵役逃れは、かなりの重罪だったはず。

私の言葉を聞いて正さんの顔色がはっきりと変わっていく。

相手の出方を見守るべく、私は睨みつけたまま、しっかりとカツヤを抱っこした。


「学のない私でも、兵役逃れがどれほどの重罪かは知っています。

これでも、将校の妻ですから」


皮肉をたっぷり込めて、相手を見据える。

普段は百戦錬磨のオトコと同等にバリバリ仕事してるんだから。

こんなろくでもないオトコになんて、負ける気がしない。


ところが。


「黙って聞いてりゃいい気になりやがって……。

その腹の子もろとも、あの世へ送ってやる!

そうすりゃいずれこの家も土地も俺の物だ」


激怒した正さんはカツヤを押しのけて、いきなり私に掴みかかってきた。
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