オトナの秘密基地
「ちょっと取りに行ってきますのでお待ちください。

……カツヤ、ついておいで」


怯えて泣いているカツヤの手を引いて、急いで征二さんの書斎へ向かった。

後ろを気にしながら歩いたけれど、正さんもさすがにここまで追ってこないようだ。


書斎に入って、机の一番上の引き出しを開けた。

そこには、征二さんから託された財産の一部を保管してある。

束にしていたあるものを取り出し、種類と枚数を確認。

……これだけ渡せば、多分満足するはず。


それから、カツヤに言い聞かせる。


「母さんはこれから、正さんと大事なお話をするから、カツヤはここで待っていなさい。

これをゆっくり食べながら、静かにしているのよ」


モンペのポケットから、さっき採ったばかりのグズベリーの実を取り出して、小さな手に握らせた。
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