オトナの秘密基地
「……ひっく」


しゃくりあげながら、カツヤがグズベリーの実をひとつ、口に入れた。


「お話が終わったら、迎えに来ますからね。

母さんが呼んだら、出ておいで。

……母さんが呼ぶまでは、出てこないでじっとしていなさい。

わかりましたか?」


涙を拭きながら、カツヤが私の顔を見た。

ここから先の話は、なるべく正さんを興奮させたくない。

カツヤにこれ以上危害を加えられないためにも、ここで待たせた方が安心だった。


「ぼくもいく」


不安そうに私を見つめるカツヤが、いやいやをした。


「カツヤは強い子でしょう?

ここでお留守番していてちょうだい」


「か~しゃん、たすける!」


「え?」


「と~しゃん、ゆびきりした」
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