オトナの秘密基地
「カツヤ……」


置いて行かれないようにと、私のモンペにしがみついている。

グズベリーの実が、畳の上にころころと転がった。


……カツヤは、出征前の征二さんとこんな約束をしていた。


「父さんがいない間、カツヤが母さんを助けるんだぞ。

カツヤは男だから、母さんを守るんだ」


「はあい!」


「男同士の約束だからな。

絶対、忘れるんじゃないぞ」


そう言って、別れの朝に指切りをしていた。


カツヤは、それを守ろうとしている。

こんな小さな子が、一生懸命父との約束を果たそうとしていたなんて。

怒鳴られた挙句、いきなり叩かれた相手のところへ戻るのは怖いはずなのに。

思わずカツヤの身体をぎゅっと抱きしめた。
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