オトナの秘密基地
用意してあった封筒をちゃぶ台の上に置き、正さんの方へ差し出した。
厚みがある封筒に、正さんの目は釘付けになり、ひったくるように封筒を取る。
そして、中身を確かめて満面の笑みを浮かべた。
「これで全部だって言ったよな?
本当にいいんだな?」
「ええ。これは元々、旦那様がご存命の時に買われた国債です。
全部で壱千円ありますから、叔父様にはどうか見つからないように保管してください」
「勿論だとも。
それじゃあ、残りの財産はせいぜい頑張って守るんだな。
……まあ、国債の価値も解らず、こんな大金をあっさりくれちまうようなお前には無理だと思うがね」
すぐに立ち上がり、ここにはもう用はないとばかりにあっさりと出て行く。
最後に憎たらしい言葉を投げつけて、私より優位に立ったつもりでいる男が滑稽に見えた。